職場におけるがん検診の重要性

がんは、日本人の死亡原因の第1位

日本人のがんの罹患率は1985年以来増加し続けています。2012年のがん罹患数は1985年の約2.5倍といわれています。今や日本人の2人に1人は生涯でがんになり、日本人の3人に1人はがんで亡くなるといわれる時代になりました。
かつてがんは不治の病とされていましたが、現在では、早期発見・早期治療で治るがんが増えています。
国は、「がん予防」を、「がん医療の充実」や「がんとの共生」と並んで計画の3本柱の1つとして位置づけています。


職域におけるがん検診の重要性

がんは高齢者がかかるイメージがあるかもしれませんが、40代、50代の働き盛りの年齢が増加しています。
がん検診には、各自治体で行われる住民健診と平成28年国民生活基礎調査によると、がん検診受診者の約30~60%が職域におけるがん検診を受けているとされています。職域におけるがん検診は非常に重要な役割を担っているのです。
またがん検診を受けて、がんを早期に発見・治療することで従業員の命を守ることができて、医療費負担の軽減も期待できるなど、企業にとっても大きなメリットがあります。
しかしながら職域におけるがん検診は法的な義務がなく、保険者や事業者が、福利厚生の一環として任意で実施しています。そのため検査項目や対象年齢等、検診の実施方法もさまざまです。
そこで、厚生労働省は、職域におけるがん検診を効果的に行うために「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を策定し、保険者や事業主はがん検診を任意で実施する際に参考にしてほしいとしています。


有効ながん検診を受けることが大事

がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減少させることにあります。職域においても、住民健診と同様に科学的根拠に基づき有効性(がんによる死亡の減少)が確認されたがん検診を受けてもらうことが重要です。

【科学的に有効と証明されたがん検診】
検診の種類 検査内容 対象年齢 受診間隔
胃がん検診 問診に加え、胃部エックス線検査又は胃内視鏡検査のいずれかとする。 胃部エックス線検査及び胃内視鏡検査を併せて提供しても差し支えないが、この場合、受診者は、胃部エックス線検査又は胃内視鏡検査のいずれかを選択するものとする。 50歳以上の者。ただし、胃部エックス線検査については、当分の間40歳以上の者を対象としても差し支えない。 原則として、2年に1回。胃部エックス線検査を年1回実施しても差し支えない。
子宮頸がん検診 子宮頸がん検診の検診項目は、問診、視診、子宮頸部の細胞診及び内診とし、必要に応じて、コルポスコープ検査を行う。 20歳以上の女性。 原則として、2年に1回。
肺がん検診 問診、胸部エックス線検査及び喀痰細胞診。喀痰細胞診は、質問の結果、原則として50歳以上で喫煙指数(1日本数×年数)が600以上であることが判明した者(過去における喫煙者を含む)に対して行う。 40歳以上の者。 原則として、1年に1回。
乳がん検診 問診及び乳房エックス線検査(マンモグラフィ)。なお、視触診は推奨しないが、仮に実施する場合は、乳房エックス線検査と併せて実施すること。 40歳以上の女性。 原則として2年に1回。
大腸がん検診 問診及び便潜血検査(2日法) 40歳以上の者 原則として、1年に1回。
出典:「職域におけるがん検診に関するマニュアル」(厚生労働省)に基づき作成

要精検の重要性も周知させる

がん検診の結果、「がんの疑いあり(要精検)」の場合には精密検査を受けます。
せっかくがん検診を受けても、確実に精密検査を受けない限り、がんの早期発見には結びつきません。
精密検査を受けることを怖がる人もいますが、要精検(精密検査が必要)イコール、がんと診断されたわけではありません。また、仮にがんであったとしても精密検査を受診することですみやかに治療に結びつけることができます。
がんが早期に発見されて、適切な治療がなされれば治るケースや仕事や生活に大きな支障なく治療できるケースが増えてきました。 要精検は、早期がんを発見できるチャンスと考えることもできます。
従業員や加入者には、「再検査の受診勧奨」を実施して精密検査の重要性を伝えて、自分のためにも家族のためにも、精密検査を受診するように促しましょう。

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