法令対応 産業保健スタッフの設置

産業保健スタッフとは?

労働者の心身の健康を確保して快適な職場をつくるために必要な健康管理を担うのが、産業保健スタッフです。産業保健スタッフは、産業医や保健師、衛生管理者(推進者)、心の健康づくり専門スタッフなどをさします。
企業は事業所の規模により産業医や衛生管理者など産業保健スタッフの設置義務があります。


安全衛生及び健康管理の義務

常時50人以上の労働者を使用する事業所は、以下の健康労務上の義務があります。
1.衛生管理者の選任(労働安全衛生法第12条)
2.産業医の選任(労働安全衛生法第13条)
3.衛生委員会の設置(労働安全衛生法第18条)
4.定期健康診断書結果報告書の提出(労働安全衛生法第52条)
5.ストレスチェックの実施と報告書の提出(労働安全衛生法第66条、第100条)
どのような内容なのか産業保健スタッフの役割とともにみていきましょう。

1.衛生管理者の選任
常時50人以上の労働者を使用する事業所では、業種を問わず衛生管理者を1人以上選任する必要があります。
衛生管理者は健康障害や労働災害を防止するために、労働衛生法で定められた国家資格です。作業環境の安全性の管理、労働者の健康管理、労働衛生教育の実施や健康に関する措置の実施などの安全衛生に関する管理を行います。
また衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害の恐れがあるときは、ただちに労働者の健康障害を防止するために必要な措置を講じなければなりません。

【事業所の規模と衛生管理者の必要人数】
事業場労働者数(常時雇用する労働者) 衛生管理者の選任数
50人以上~200人以下 1人以上
200人を超えて500人以下 2人以上
500人を超えて1,000人以下 3人以上
1,000人超えて2,000人以下 4人以上
2,000人を超えて3,000人以下 5人以上
3,000人超える場合 6人以上

2.産業医の選任
常時50人以上の労働者を有する事業所では、産業医もまた必ず選任しなければなりません。
事業場で常時使用する従業員が50人に達した日から「14日以内」に事業場を管轄する労働基準監督署に「産業医選任届出書」を提出する必要があります。
従業員数が3000人を超える事業所は、産業医を2名選任する必要があるなど、規模が大きくなれば、産業医も複数選任することが定められています。
また1000名以上または有害業務に500名以上の労働者が従事する事業場では、事業場に専属の産業医が選任されることになっています。

3.衛生委員会の設置
衛生委員会は、労働安全衛生法により従業員50人以上の事業場は業種に関係なく設置することが義務づけられています。
衛生委員は、総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等(1名)、衛生管理者、産業医、当該事業者の労働者(安全に関する経験を有する者)で構成され、企業内で労使がともに労働災害防止の取り組みを行うことを目的とします。衛生委員会は月に1回以上開催し、議事録は3年以上保管する必要があります

4.定期健康診断結果報告書の提出
たとえ1人でも1年以上雇用しているもしくは雇用予定のある従業員がいれば、1年以内ごとに健康診断を実施することが法令で義務づけられています(「従業員の健康診断は会社の義務」参照)。
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断実施後は健康診断の結果書を所轄労働基準監督署に提出する必要があります。また健康診断個人票を5年保存しなければなりません。

5.ストレスチェックの実施
労働者の数が常時50人以上の事業場に対して、毎年1回のストレスチェックを行うことが義務付けられています。
ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防と職場環境の改善にあります。
パートタイムやアルバイトでも、1年以上雇用もしくは雇用予定のある従業員や正規従業員の4分の3以上働く人には、ストレスチェックの実施の対象となります。
事業者は、医師、保健師または一定の研修を受けた看護師もしくは精神保健福祉士から、ストレスチェックの実施者を選定します。
ストレスチェックの実施は外部委託も可能ですが、産業医等が共同実施者として関与することが望ましいとされています。
実施事務従事者は、実施者のほか、実施者の指示によりストレスチェックの実施の事務に携わります。一般的には、社内の衛生管理者やメンタルヘルス担当者、産業保健スタッフ、事務職員などが指名され、守秘義務が発生します。
なお、事業者は、ストレスチェックの結果について、労働基準監督署に報告を行わなくてはなりません。報告義務を怠った場合、労働安全衛生法100条の違反となり、50万円以下の罰金に処せられるため、注意が必要です。

そのほか従業員50人以上の事業所に求められる法令上の義務としては「障がい者の雇用義務」「休憩所の設置(常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用する事業者)などがあります。

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