事業主と保険者(健康保険組合等)のコラボヘルスとは?

健康経営の施策の1つ

近年は、長時間労働の常態化や職場のメンタルヘルス不調の増加などが、社会的な問題になっています。従業員の健康管理やメンタルヘルス対策は、企業にとって重要な課題です。一方で、少子高齢化が深刻な日本では、多くの企業が近い将来人手不足の問題に直面するといわれています。
こうした社会の動きの中、注目されているのが、「健康経営」という取り組みです。
健康経営とは、企業が従業員の健康管理を「投資」という経営的な視点で考え、戦略的に実践していくものです。健康経営に取り組むことにより、従業員の病気予防といったリスクマネジメントと企業のイメージアップの双方の効果が期待されます。
健康経営は、企業が今後成長するために欠かせない取り組みであり、政府や経団連も積極的に推進しています。
その健康経営の具体的な施策の1つとされているのが、事業者と保険者の「コラボヘルス」です。


特定健診制度との関係

コラボヘルスの中核をなすと考えられているのが「特定健診・特定保健指導です(「特定健診の受診義務」参照)。
労働安全衛生法により一般健康診断が行われてきましたが、それに加えて現役で働いている世代に対する生活習慣病対策として取り入れられたものが「特定健康診査」です。
40歳から74歳までの公的医療保険に加入者している全員が特定健診を受けなくてはなりません。また、特定健診の結果に応じて、特定保健指導を実施することが保険者に対して義務付けられており、これにより事業主と保険者(健康保険組合等)のコラボヘルスへの注目が高まりました。


「コラボヘルスガイドライン」の作成

2017年、国は「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」を公表しました。
保険加入者(従業員・家族)の健康増進や病気予防を効果的に行うために、事業主と保険者がそれぞれの立場・役割で協働的に取り組んでいくことを目指します。
ガイドラインではコラボヘルスの意義について、保険者は保健事業を実施し、事業主は職場環境を整備するという役割分担を行うことで、保健事業の基盤を強化する。このことにより、保険者による「保険者機能の発揮」と事業主による「健康経営の推進」が同時に実現し、医療費の適正化や保健事業の円滑な実施、事業所においては従業員の生産性の向上がはかれると解説しています。


コラボヘルスがもたらすメリット

企業は従業員の健康を守ることにより、労働生産性の向上がはかれるだけでなく、離職や医療費の削減、労災やメンタルヘルスなど企業側のリスクを低減させることができます。また先に述べたように、健康経営の推進は企業ブランドのイメージ向上にもつながります。
従業員もまた健康的な生活を送ることで、生活の質が向上します。環境が整った職場では生き生き働くことができるでしょう。
企業と組合、従業員はそれぞれ立場が違いますが、「コラボヘルス」を実践することにより、三者それぞれに大きなメリットが期待できることから、積極的に取り組む企業が増えています。

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