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従業員の健康診断は企業の義務!知っておきたい基礎知識

作成者: カスタマー担当|Feb 17, 2021 11:14:49 PM

なぜ健康診断をしなくてはならないのか

健康診断は、労働安全衛生法により定められている企業の義務です。会社は労働者を、健康な状態で働かせるという「安全配慮義務」があるからです。
健康診断の実施は従業員の人数や企業の規模で決まるものではありません。たとえ従業員が1人でも1年以内ごとに定期的に健康診断を実施することが法令で義務づけられており、その費用は、会社が負担する必要があります。
労働安全衛生法(安衛法120条1項)では、従業員に健康診断を受診させていない企業に対して、50万円以下の罰金を科しています。
また、一方で近年では30代、40代で生活習慣病を指摘される人が増えています。生活習慣病の初期は、目立った自覚症状が出てきません。従業員の健康上の問題を早期に発見するためにも、定期健康診断は受診率100%を目指しましょう。
しかし従業員の中には、自分はまだ若いから、あるいは健康に不安を覚えていないから健康診断を受ける必要はないと考える人もいるかもしれません。そのような従業員に対しては、健康診断の意味や必要性をていねいに説明する必要があります。
従業員に健康診断をしっかり受診してもらうためにも、総務・人事が最低知っておくべき健康診断についてお話します。

実施が義務付けられている健康診断の種類

企業が実施する健康診断は、大きく分けると職種に関係なく常時労働者を対象とした一般健康診断(1年内ごとに1回)と、有害な業務に常時従事する携わる労働者に対する特殊健康診断(6か月ごとに1回)があります。

【一般健康診断の種類】
健康診断の種類 対象となる労働者 実施時期
雇入時の健康診断
(安衛則第43条)
常時使用する労働者 雇入れの際
定期健康診断
(安衛則第44条)
常時使用する労働者
※次項の特定業務従事者を除く
1年ごとに1回
特定業務従事者の健康診断
(安衛則第45条)
労働安全衛生規則第13条第1項第2号(※1)に掲げる業務に常時従事する労働者 左記業務への配置換えの際、6か月ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断
(安衛則第45条の2)
海外に6か月以上派遣する労働者 海外に6か月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便
(安衛則第47条)
事業に付属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者 雇入れの際、配置換えの際
*労働安全衛生規則第13条1項第2号(※1)に掲げる業務/深夜業を含む業務、重量物の取り扱い等重激な業務、多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務等)
出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレットより 一部改変

●特殊健康診断

法定の有害な業務に常時従事する労働者に対して行う特別な健康診断です。高気圧業務、電離放射線業務、特定化学物質業務、石綿業務、鉛業務、四アルキル鉛業務、有機溶剤業務などがそれにあたります。

知っておきたい定期健康診断の検査項目

今回は一般健康診断として年に1回行う定期健康診断についてみていきましょう。
法律で定める定期的に行う一般健康診断では、次の検査項目があります。

【定期健康診断の検査項目】

1.既往歴及び業務歴の調査
2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3.身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
4.胸部X線検査及び喀痰(かくたん)検査(※)
5.血圧の測定
6.貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※)
7.肝機能検査(GOT、GPT、γGTP)(※)
8.血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)
9.血糖検査(※)
10.尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11.心電図検査(※)

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレットより

なお、定期健康診断の項目の※印については、年齢や医師の判断などそれぞれの基準により省略可能な項目です。
ただし、省略可能であるかどうかは、医師が自覚症状や他覚症状、既往歴等を見て総合的に判断するものです。医師ではないものが健康診断の項目の省略を判断することはできませんので、産業医または健康診断機関に相談することが必要です。
なお、雇入れの直前または直後に実施する雇入れ時の健康診断(労働安全衛生規則第43条)は、一般健康診断とほぼ同じ検査項目ですが、検査項目の省略は認められません。

健康診断は非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パートタイム労働者)も必要か?

一般健康診断の場合、実質的に正規従業員とほとんど変わらない時間働くのであれば、正規従業員と同じレベルの健康管理をする必要があります。
労働安全衛生法で、パートタイム労働者などの短時間しか働かない従業員でも、正規従業員の4分の3以上働く人には、一般定期健康診断を受診させることを義務づけています。(労働安全衛生法 66 条1項)。
また派遣社員の場合は、一般健康診断は派遣会社(派遣元)が派遣社員の一般定期健康診断を実施することが義務づけられています。ただし、有害業務に派遣社員をつかせている場合は、派遣先が実施義務を負います(労働者派遣法45条)。
健康診断の結果に基づく就労に関する義務については、派遣元・派遣先の双方が負います。

健康診断実施後の義務

従業員に健康診断を受けさせたら、それで終了するわけではありません。
その後のフォローも重要な仕事のひとつであり、法律上の決まりがあります。
健康診断を受けた後の措置にはどのようなものがあるのか、みていきましょう。

●健康診断結果の通知義務

事業者は、受診者全員に所見の有無にかかわらず健康診断の結果を文書で通知する義務があります健診の結果、問題のない人にもきちんと通知しましょう

●健診診断個人票の保存(5年間)

健康診断の結果は、その結果に基づき健康診断個人票を作成し、5年保存しなければならないと定められています。
また常時使用する労働者が50人以上いる事業所は、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署へ提出する義務があります。
なお、健康診断の結果や保健指導の内容など健康に関する情報は、いずれも配慮すべき個人情報です。個人情報の管理や保存には細心の注意が必要です。

●結果について医師からの意見聴取の実施

健康診断の結果、もし「要所見」「要再検査」など、異常が見つかった従業員がいれば、会社は従業員の健康保持のために必要な措置(就業上の配慮事項など)について産業医(医師)から意見を聴取しなければなりません。
労働者が就業を続けることが可能かどうかを、産業医が判断することを、就業判定と言います。定期健康診断後には、必ず産業医(医師)による、就業判定を実施します。

●事後措置の実施

医師などの就労判定に従って、労働時間の短縮や時間外労働の制限、出張回数の制限や労働負荷の制限、就業場所や部署の変更や夜勤業務の減少など、企業は必要に応じて適切な措置を講じましょう。

●二次健診の受診勧奨、保健指導

健康診断の結果によって、再検査が必要な場合は、従業員は再検査(二次健康診断)を受けなければなりません。企業は従業員に対して再検査を受けるように促す必要があります。
労働安全衛生法では、二次健康診断の受診勧奨は企業の努力義務として定められています。
さらに、従業員の健康状態を保つためには、医師や保健師、衛生管理者の保健指導健康診断後に保健指導を実施していきましょう。

従業員の健康に配慮し健康管理を徹底して行うことは、休職者や離職者の減少につながり生産性をあげます。また、従業員の健康に配慮し、よりよい職場環境をつくることで従業員のモチベーションも高まります。 企業のパフォーマンスを上げていくためにも、健康診断を適切に行い、従業員の健康管理を徹底して行いましょう。